高鶴裕太の ヘタッピやきもの研究所 上野焼の伝統技術を用いた緑青流し・青織部などを施し、ご要望に添ったオリジナルの作品で空間を華やかに彩ります。土の素材感を活かし、深見あるお色を演出する陶器は和洋どちらのメニューの食材も、艶やかさを一層引き立たせます。オーダーメイドでお作りする器はこだわりを繊細に表現いたしますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

[オーダーメイド] リゾットのお皿の作り方|マンガン結晶釉(-56/56J)

リゾット皿の作り方について

 

こちらは以前ご注文をいただいて作った直径29cmのリゾット用のお皿でして、形自体は何年か前にオーダーメイドで作らせていただいたものだったんですけど、今回は「形はそのままで、色だけ変えて作る」というセミオーダーの器になります。イタリア料理のレストランからのご依頼ですね。

 

 

 
色だけ変えて、ということなんですけど、焼き物の色というのは釉薬(ゆうやく)というもので作られておりまして、釉薬というのは長石や二酸化マンガンや植物の灰などの鉱物が混ぜ合わさったもので、実はこれガラスの一種なんですね。今回のリゾット皿は釉薬の発色が重要なものだったので釉薬について説明させていただきます。
 
今回のマンガン結晶釉の色というと、こげ茶色と明るい茶色の入り混じったややマットなお皿って感じでしょうか。釉薬の色を表現するのは難しいですね。

 

 

釉薬について

 

私がお世話になっている福岡県セラミック研究所の焼き物博士いわく、釉薬というのは一番コントロールが難しいガラスなんだそうで、というのも通常のガラスであれば調合した素材と焼成温度によって出来上がりも予測ができるのですが、釉薬の場合 粘土で作った器の表面にかけますので、この粘土の成分が器の出来上がりにものすごく影響を与えるらしいです。

 

 

 

 

 

陶器が焼き上がったとき、器の表面は3層にわかれていまして、一番下、というか内部が粘土の層、真ん中が中間層という釉薬と粘土が混ざり合った部分で、表面が釉薬によるガラス層になります。この真ん中の中間層があることで陶器の強度が上がり、色合いも複雑になってくるらしく、実際に粘土が変われば同じ釉薬でも全然違う色になったりします。

 

 

マンガン結晶釉について

 

それでこのリゾットのお皿に使ったマンガン結晶釉なんですけど、調合比率は[長石50/石灰30/カオリン10/珪石70/二酸化マンガン30]になります。

 

焼き物屋さんにとって釉薬の調合比率というのは 「鰻屋さんの秘伝のタレのレシピ」みたいなものなんですけど、私は構わずバラしちゃいまして、その理由は 自分たちだけで知識を囲っていい思いしようたあ太え野郎だ、富の独占は社会の発展を阻害する!なんという正義感によるものではなく、このマンガン結晶の調合は 昔の釉薬の本に書いてあったのをそのまま混ぜて作ったものなので そもそも私が開発したものではないのですな。

 

本に載っているくらいだから 多分先ほどのやつも標準的なマンガン結晶釉のレシピなんですけど、そこは土の違いや焼き方の違いがありますから同じように釉薬を調合しても、器にかけて焼き上がったものは また違う色合いのものになると思います。長石とかカオリンとか一口に言っても産出地によって性質が変わるからどれを選ぶかで色も変わりますし、
 
混ぜるときのボールミルの大きさや一回で作る量、混ぜ合わせる時間なんかでも すり潰された粒子の形が変わって釉薬の発色が変化するっていうことらしいですから、作る人が変われば出来上がるものも全然違う作品になりそうですね。
 
そんなマンガン結晶釉は割と焼き方や温度によって変化が起こる釉薬でして、以下に焼成条件ごとの発色の違いを写真で並べておきます。
 

 

リゾット皿[29cm]マンガン結晶釉

 

このお皿はマンガン結晶釉を十分にのせて還元焼成したものですね。釉薬の厚いところは金色っぽく、薄いところは茶色になっています。この釉薬は全体的に均一に発色するより、大まかな濃淡があったほうが器の表情が生きてくると思います。

 

リゾット皿[29cm]マンガン結晶釉

 

 

 

リゾット皿[29cm]マンガン結晶釉

 
こちらのマンガン結晶釉は焼き方は同じく還元焼成なんですけど、釉薬をやや薄めにかけて、上のお皿の時よりやや高温で焼いたものです。10度くらい高い温度で焼いたのかしら。1230度くらい?ちょっとうろ覚えなんですけど、釉薬がしっかり融けるまで十分に火を通したって感じですね。上のお皿に比べて全体の色味は暗くなるのですが、暗い中に黄色い結晶が無数に浮かんで、コントラストがよりパキッと決まってる感じになっています。

 

 

リゾット皿[29cm]マンガン結晶釉 

 

 

リゾット皿[29cm]マンガン結晶釉

 

このお皿は2回焼きしたもので、1度目の焼成ではマンガン結晶釉を薄めにかけて焼いて、窯から出てきたものにもう一回同じ釉薬をかけて、2度目の焼成では1回目より低い温度で焼くことでこんな感じになりました。2回目にのせた釉薬が縮まってこういった亀裂みたいな模様になっているんですけど、料理の背景としては主張が強いみたいですね。私は蛇っぽくて好きなんですけど。亀裂の入り方はその都度異なるのでアンコントローラブルな焼き方です。

 

リゾット皿[29cm]マンガン結晶釉

 

同じ焼き方をしたお皿です↓

リゾット皿[29cm]マンガン結晶釉

リゾット皿[29cm]マンガン結晶釉

 

 

マンガン結晶釉についてその2〜城島瓦でのいぶし焼成〜

 

ここからは少し特殊な焼き方になってくるんですけど、福岡県の久留米市に城島瓦という瓦焼きの産地がございまして、下↓の画像は私が前に作ったポップで、城島瓦の簡単な説明になります。
 

 
「いぶし銀」という言葉のまさに元となる、いぶされて銀色になる瓦を生産している産地なんですけど、そのいぶし加工というのが普通の陶芸の窯とは違って、すごい強い還元状態で焼くんですよね。仕上げでは酸素が入んないようにした上でガスを入れて強還元となるみたいです。
 
城島瓦が焼き締まる焼成温度が大体1,000度くらいらしく、陶器の焼成温度としてはやや温度が低いんですけど、一度本焼きした器を城島瓦のいぶし窯で焼いてもらうと、低温×強還元によって釉薬の一部だけが反応して、これまた全然違う色になります。釉薬によって反応のあるもの、ないものが分かれるのですが、だいたい鉄とか銅とかマンガンとかのメタルたちが入っている釉薬ほど変化が大きいみたいですね。
 
元々このマンガン結晶釉も城島瓦の焼成における釉薬変化のテストサンプルとして調合した釉薬だったんですけど、そのテストサンプルの色見を見てオーダーしていただいたのがこのリゾットのお皿になります。なので半分が庚申窯で焼成したもの、半分が城島瓦の窯にて2回焼きしたもの、という2色のオーダーでした。

 

 
こちら↑が城島瓦で焼いてもらったマンガン結晶釉のリゾット皿なんですけど、一度焼きのものと比べると穏やかな表情になりますね。マンガン結晶釉は強還元で優しい発色になるみたいです。他の釉薬は強烈な色になったりするんですけど。ちなみに上↑の写真の左から2枚目の裏返しのお皿、高台の畳付きの部分には釉薬がかけられないので土がむき出しになっているのですが、城島瓦で焼成した場合 土肌に炭素が定着して 土の部分がいぶし銀になります。いぶし加工された陶器を見分けるポイントですね。
 
城島瓦で2回焼きしたものも、1回目の釉薬の焼け具合によって表情が変わります。
以下↓はマンガン結晶釉で2回焼きしたリゾット皿たちです。 
 

 

 
城島瓦での焼成は、今後 銀色の器のシリーズとして作っていきたいと思っています。また銅を使った釉薬を強還元で焼くと赤の強い発色になるので、その色もまた そのうちこちらのサイトで紹介させていただくと思います。城島瓦の焼成についてはお願いすると瓦を焼くついでに陶器も焼いてもらえますので、気になる方はご連絡ください  →  お問い合わせ
 

 

リゾット皿の形について

 
今回のお皿は直径がおおよそ29cm、中心の窪みのところが直径10cm、深さが1cmほどで、私がいつも作っているディナープレートと比べると窪みが大きめになっています。その窪みにそれなりの容量があるので、窪み以外のところはなるべくフラットに近い形にしました。ただ手作りなので個体差はありますね。

 

 

高台はできるだけ広めに、高さもあまり出ないよう窪みのギリギリまで低く作っています。重なりもまあまあいい感じですね。
 

 

 
 
下↓の写真は城島瓦で焼いてもらった方のリゾット皿ですけど、個人的にはこちらの色味の方が好きですね。なんかマイルドな感じで。通常の食器にもいいかもしれないですけど、ある程度のサイズがあったほうがこの釉薬は綺麗に見えると思いました。またそのうち作りたいですね。
 

 

 

 

高鶴裕太

伝統工芸品
[上野焼(あがのやき)]
の窯元 庚申窯(こうしんがま)

の3代目

 

【陶器】オーダーメイド| 高鶴裕太の ヘタッピやきもの研究所

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代表者名 高鶴 裕太 (コウヅル ユウタ)
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